vol.1 Yoga Yard ヨガヤード/北京

vol.1 Yoga Yard ヨガヤード/北京

歴史に育まれた風格と風情の残る町並みが、ほっと懐かしい気分にさせてくれる古都であり、上海に次ぐ中国第二の都市として目覚ましい発展を遂げているコスモポリタンでもある北京。ヨガスタジオ『ヨガヤード(Yoga Yard)』があるのは、北京南東部に位置する三里屯というエリア。世界各国の大使館が立ち並ぶ北京いち国際色豊かな界隈とあり、スタジオ周辺ではヨガマットを抱えた西洋人の姿もちらほら見られる。スタジオがあるのはモダンな近代建築で、エレベーターが扉を開くと、無造作に脱ぎ捨てられたビーチサンダルと、ヨガウェアやヨガ書籍が並ぶヨガブティックが出迎えてくれる。旅行者なら誰もが、一瞬にしてそこが北京だということを忘れてしまうだろう。スタジオ経営者のひとりロビン・ウェクスラーと中国人インストラクターのショーンに、北京唯一のバイリンガルスタジオをオープンした経緯や、北京のヨガシーンについて話を聞いた。

北京でヨーガを教えるということは、ごく自然な流れだった

「もともとは転職と結婚を機に北京に移住しましたが、ヨガスタジオが恋しくて、地元のヨガスタジオのあの雰囲気を北京に作りたいと思いました。」 2002年に中国系アメリカ人のミミさんと『ヨガヤード』を立ち上げたロビンさんは言う。それもその筈、ロビンさんの地元はサンフランシスコ。道を歩けばヨガスタジオに当たると言われるYOGA CITY。国際空港に2012年1月に世界初となる「ヨガルーム」がオープンしたのも記憶に新しいところ。地元でヨーガのティーチャーズトレーニングを修了したロビンさんにとっては、北京でヨーガを教えるということは、ごく自然な流れだったと言う。「初めはホテル内のジムでヨーガを教えていました。生徒としてレッスンに来ていたミミさんに一緒にスタジオをオープンさせようと誘われたのがヨガスタジオ設立のきっかけです。」

フィットネスからセラピーへ。
変化する社会に対応する処方箋としてのヨーガ

<写真>『ヨガヤード』のスタジオ名の由来となったのが設立当時にスタジオがあった四号院のCourt Yard(庭園)

清潔でコンパクトなスタジオスペースを探していたロビンさん達が最初に選んだのは北京駅からほど近い四合院(伝統的な平屋建て集合住宅)だった。「高官が住んでいた見事な明朝時代の建築物で、前庭・後庭・中庭と庭が並び、まるで紫禁城のミニチュア版のような場所でした。ヨガマットが6,7枚敷ける程度の部屋を茶館とシェアしていたので、不規則なレッスンスケジュールでしたが、主に外国人の生徒たちを集めてレッスンを行っていました。2003年から2005年までは雍和宮近くにスタジオを移し、今の三里屯にスタジオを構えたのは2005年のことです。」
その2005年にスタジオが主催する指導者養成トレーニングを修了し、今ではスタジオの人気ティーチャーのひとりとなったショーンは、中国語と英語の2か国語を使ってレッスンをしている。「ある日、担当するレッスンに9か国の違った国籍の生徒が集まったことがありますが、普段は中国人と外国人が半数ずつくらいです。」「外国人の駐在員やその家族は流動的なものです。北京のコミュニティにヨーガを広めるという目的があるので、設立当初からバイリンガル体制を一貫しています。」とロビンさんは言う。

<写真>スタジオ経営者・ヨガ指導者の他に出産時の母親に付き添う助産カウンセラーの顔をもつRobyn Wexlerさん。

そして中国人コミュニティにヨーガを浸透させる鍵となるのが、ショーンのような中国人の指導者の育成と、ストレス社会に対する処方箋としてのヨーガ、セラピーを目的としたヨガスタイルの提案だとロビンさんは言う。「中国人は健康に対して大変意識が高い国民だと思いますが、その一方で、感情表現に乏しいという一面があります。北京でも精神科医にかかる人は少しずつ増えてきていますが、投薬治療が主でセラピーの域には至っていないと思うのです。そういった意味で、私が注目しているのがセラピーとしてのヨーガです。特にヨガニードラの指導者Richard Miller先生の iRest Yoga Nidra のプログラムを中国語に訳して、中国のヨガコミュニティに紹介したいと考えています。」
中国に長く暮らすロビンさんだからこそ「処方」できる良質なレッスンプログラムが、西海岸から輸入されることは、中国のヨガコミュニティにとって喜ばしいことだろう。そして、どこからやってきても、どんなに疲れてやってきても、「おかえり」と迎えてくれる『ヨガヤード』は、旅人にとっても重い荷物を降ろして素に戻れるようなスペースだ。北京いちファッショナブルな三里屯エリアを散歩しながら、ふらりと立ち寄ってみてはどうだろうか。

Photo: Courtesy to Yoga Yard / Mimi Kuo-Deemer